夏休みの最終日。
お腹が痛いと言う息子はご飯もあまり食べずに、
トイレ以外は布団から出てきませんでした。
夜中も何度かトイレに起きていて、
私はこの時初めて少し嫌な予感がしました。
『これってまさか?』
と思いながらも、不登校になるわけがないと思いたくて、
小学生の頃の元気な息子を思い出そうとしていました。
『小学校はあんなに張り切って行っていたのに。』
『部活がそんなに嫌ならやめたらいいじゃない』
くらいにしか思っていませんでした。
実際友だちに誘われて入った部活動は、習い事も何もしてきていない彼にとって、
とてもハードすぎたように感じていました。
せっかくの土日も試合でなくなり、試合の前日は家でもあまり話さなくなっていました。
『原因はきっと、部活動だからやめれば問題ないだろう』
そう考えたわたしは、息子に言いました。
「部活動やめてもいいんだからね」
けれど、息子がその言葉に反応することはなく、そのまま2学期が始まりました。
嫌な予感は的中して、息子が布団から出てくることはありませんでした。
わたしは学校に電話をしました。
「すみません、数日前から腹痛で休ませてください」
「わかりました、お大事になさってください」
先生の落ち着いた声で、わたしの焦りが浮き立ちました。
腹痛は治りませんでした。
毎日「お腹痛い」と言う息子に、どうしていいのかわからなくなってきて、
朝昼晩と彼の部屋に入っては
「なにかあったの?」
「誰かと喧嘩したの?」
そんなことばかり聞いて彼を追い詰めていました。
息子は私の気配がすると頭まで布団を被り顔さえ見せなくなりました。
それを見て私は『今日は何も聞かないでおこう』と決めるのに、
次の日には不安でたまらなくなって、またおなじことを繰り返していました。
同じ家の中にいても息子の声を聞くことがどんどん少なくなりました。
学校を休んで1週間くらい経つと、
わたしは不安で色々なことを想像していました。
『理由があるはず。どうして行けなくなったんだろう。』
『もしかしたら、加害者がいるのではないか。誰かが息子をいじめている?』
止まりませんでした。
どこの病院に連れて行っても、腹痛の薬が出ただけでした。
息子の握るスマホに答えがあるのではないかと思いました。
『中を見たら解決するかも』
寝ている間にこっそり見ようか。
いっそ、無言で取り上げてしまおうか。
昔のわたしを思い出しました。
母に見られたあれこれで、何かを解決したことはありませんでした。
『わたしの欲しいものはそこにない』
踏みとどまったわたしは、更に増した不安をかき消したくて息子の部屋のドアを開けました。
頭まで布団をかぶって動かない息子に向かって、
「ねぇ、本当に何があったの」
と、何度も聞きました。
布団から顔を出した息子は赤い目をしていました。
