「もしもし?お母さん?今日わたしこんなことして」
「お母さん、これどうしよう。どっちがいいと思う?」
結婚してから遠くに住む母には
何かある度に電話で報告をしていました。
家の中の大きな家具を買うときや
子どもたちのちょっとしたことや、夫とのやり取り。
今日の夕飯の献立も、天気や気温さえも。
若い頃は何かあった時にかけていた電話は
母が年を取るにつれて頻度が増えました。
アラフォーになる頃にはほぼ毎日電話をしていて
わたしはそのためだけに、携帯プランのかけ放題に入りました。
初めて自分の車を買ったときも
『こんな高いもの怒られるんじゃないか』と思って
どうやって報告すればいいのか、毎日考えていました。
車が来て半年くらいしたときに、父母の車を買い替える話を聞いて
それに便乗して報告をしました。
「いいじゃない」
ホッとしました。
『この先、母に何かあったら誰に相談したらいいんだろう。
誰がわたしに正解をくれるんだろう。』
300km以上あるところからのわたしの電話を
母は【定期連絡】と呼び始め
困りごとの相談は何でもわたしにしていました。
電話を切るとすぐにパソコンやスマホを開いて
母の不安や困りごとを解決するために
色々調べました。
『明日の定期連絡までには、解決しないといけないんだ』
それは父母の旅行の計画や、そこで行く美味しいお店。
庭の草むしりをどうやって簡単にするか
親戚との付き合い方。
家の不具合を相談された時も、1時間以上かけて調べ、
父母の住む地域での業者探しや値段の見積もりまで
完璧に取りました。
そうしてまとめたものを母に翌日話すと
「あら、調べてくれたの。でも◯◯(弟)に頼んだからいいわ」
と言われることばかりでした。
『解決してたんだ。良かった』
何でも提案をするわたしの意見を、母は聞きたがるようになっていました。
採用されることは10%以下でした。
けれど、あの頃のように
「次は100点取りなさい」とも
「あの子は何点だったの?」とも言われることはありません。
わたしの提案をただ称賛してくれました。
気がつくと、毎日電話をするようになっていました。
約束したわけじゃないけれど、タスクになっていました。
だけど、忘れてしまうこともありました。
長時間外出していたり、仕事が詰まっていたり
考える余裕のないときや、寝てしまったとき。
母に電話をすることができない時がありました。
そんな日の夕方は、わたしの携帯電話は
着信履歴が母で埋まりました。
それに気が付かないとLINEが来ます
【どうしたの?】
【大丈夫?】
【なにかあった?】
慌てて母にかけます。
「ごめんね。気が付かなくて」
だけど、全く気が付かずに1時間位経ってしまうこともありました。
今度は娘からLINEが来ます。
「大丈夫だと思うけど、おばあちゃんから鬼電来てたよ。笑。」
「寝てるんじゃない?って言っておいたから。笑。」
慌てて母に電話をして謝ります
「ごめんね。体調悪くて寝てて気が付かなかった」
「本当にごめん。気をつけるね」
そして娘に電話をします
「ごめん。今おばあちゃんにかけたから」
娘は笑いながら言いました。
「お母さんも大変だね。いいよこのくらい。笑。」
「だけどなんで、お母さんが謝るの」
